仮想パッチ(Virtual Patching)とは

 

 

仮想パッチ(Virtual Patching)とは

仮想パッチとは、セキュリティポリシーとルールによる複数のレイヤーを実装することで資産を保護する「脆弱性シールド」の手法です。
このような多層的なセキュリティ対策により、脆弱性を狙ったネットワーク経由のエクスプロイトを阻止・遮断します。仮想パッチは、既知および未知の脆弱性を悪用する脅威に対して効果的な防御策として機能し、実際のソフトウェアパッチやアップデート(適用が困難な場合もあります)の必要性を低減します。

効果的な仮想パッチソリューションは多層的で、ビジネスクリティカルなトラフィック内の悪意あるアクティビティを検出・ブロックします。また、ウェブ接続されたアプリケーションへの侵入を検知し、攻撃を未然に防止するものであり、物理・仮想・クラウドいずれの環境にも対応可能です。

この仮想パッチは、既存のセキュリティ技術やパッチ管理ポリシーを補完することを目的としています。最大の利点の一つは、セキュリティチームが脆弱性の評価や通常パッチのテスト・適用に必要な時間を確保できる点です。これにより、不要なダウンタイムを回避しつつ法規制への準拠を維持でき、通常のパッチ提供が終了した、または適用に多大なコストがかかるレガシーシステムのセキュリティ確保にも寄与します。

 

IT環境における仮想パッチ

IT環境における仮想パッチは、実際のソフトウェア修正を行わずに脆弱性を保護するセキュリティ手法です。攻撃者が脆弱性を悪用する際に通るネットワーク経路を遮断することで、パッチ未適用の状態でも安全性を確保します。自動化ツールにより脆弱性を検出し、ファイアウォールやIPS、エンドポイントセキュリティなどにルールを適用して不正な通信を防ぎます。この仕組みにより、サポートが終了したレガシーシステムや脆弱なクラウドサービス、データベース、エンドポイント機器などを攻撃から保護できます。

 

OT環境における仮想パッチ

OT環境ではシステムの稼働継続が最優先されるため、従来のパッチ適用が困難です。仮想パッチは、ICSやSCADAシステム、エンドポイント、サポート終了のレガシーデバイスなどに対して、ダウンタイムなしで脆弱性を保護できる有効な手段です。セキュリティ評価や脅威インテリジェンスを通じて脆弱性を特定し、IPSやIDSなどにルールを設定することで、不正なトラフィックを遮断します。仮想パッチは、ネットワークのゾーン間やPLC・HMIなどの重要機器の前段に配置され、リアルタイムで通信を監視・制御し、攻撃からシステムを守ります。

 

仮想パッチの課題

仮想パッチには多くの利点がある一方で、いくつかの課題も存在します。最大の制限は、根本的な脆弱性やソフトウェアの欠陥を修正するものではなく、一時的な防御策である点です。特にOT環境では、旧式のシステムやセキュリティ設計が不十分なデバイスが混在しており、全体の保護に時間とリソースを要します。また、仮想パッチの導入によってシステムの可用性や性能に影響を及ぼすリスクもあり、事前の安全なテスト環境での検証が不可欠です。さらに、人材不足、技術的知識の欠如、OTとITチーム間の連携不足、脅威の進化への対応の難しさなども課題として挙げられます。

 

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