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病院を狙うランサムウェア攻撃~最新事例から学ぶIT/OT全体の具体的なセキュリティ対策とは~

Oct 30, 2025

病院を狙うランサムウェア攻撃〜最新事例から学ぶIT/OT全体の具体的なセキュリティ対策とは〜

なぜ病院が狙われる?最新のランサムウェア攻撃事例を基に、見落とされがちな医療機器(OT)の脆弱性やVPNといった侵入経路を解説。電子カルテから医療機器まで、病院全体を守るための具体的で実践的な対策がわかります。

 

 

なぜ今、病院がランサムウェア攻撃の標的になっているのか?

医療現場を狙うランサムウェア攻撃が急増しています。病院を含む医療機関が標的となるのは、単に身代金を払いやすいからではありません。電子カルテや医療機器がネットワークで結ばれ、ITとOT(Operational Technology)の境界が曖昧になったことで、攻撃対象領域(アタックサーフェス)が急速に拡大しているためです。

こうした構造的な変化により、医療機関のサイバーセキュリティ対策はこれまで以上に複雑化し、攻撃者にとって侵入しやすい環境が生まれています。

医療機関は社会インフラとしての責任を負う存在であり、診療停止は人命に直結します。その特性を悪用する攻撃者は、経営的・倫理的な弱点を突き、効率的に金銭を得ようとするのです。さらに、病院が扱うデータの価値は極めて高く、研究・創薬・個人情報といった情報資産はダークウェブで高額取引されます。医療機関へのサイバー攻撃は、単なる経済犯罪ではなく、社会全体の安全保障にも影響を及ぼす深刻な問題です。

ランサムウェアは単なるITリスクではなく、病院経営と医療安全を同時に脅かす現実的な脅威です。ここでは、医療機関がなぜ攻撃者にとって魅力的な標的となるのかを、3つの視点から整理します。

 

理由1:人命に関わるため「身代金の支払いに応じやすい」

病院は、人命を預かる社会的使命を持つため、診療が止まれば即座に影響が出ます。救急搬送の受け入れ停止や手術延期は、患者の生死に関わる事態を招くため、攻撃者にとって「支払いに応じやすい組織」として認識されています。

倫理的には「犯罪者に屈するべきでない」と分かっていても、経営判断として診療継続を優先せざるを得ないケースが多いのです。実際、欧米では人命を守るために身代金を支払った医療機関の事例も報告されています。

さらに、病院のITシステムは複数の委託先や医療機器メーカーが関与しており、復旧には時間と費用がかかります。復旧コストと人命リスクを天秤にかけた結果、短期的な判断で支払いを選ぶケースが後を絶ちません。

攻撃者はこの「倫理と現実のギャップ」を熟知しており、社会的圧力が強い医療機関を狙うのです。

 

理由2:個人情報や研究データなど「価値の高い情報」の宝庫

病院が扱うデータは、単なる患者情報にとどまりません。電子カルテには、病歴・処方・検査結果などの機微情報が含まれ、研究部門では創薬データや臨床試験の成果も蓄積されています。これらはダークウェブで非常に高値で取引される情報資産です。

特に、医療研究データは国家的な戦略技術ともいえる領域であり、攻撃者は金銭目的だけでなくスパイ活動の一環としても情報を狙います。

情報の価値が高いほど、攻撃者にとってリターンも大きくなります。医療機関の情報セキュリティ体制が十分でない場合、容易に侵入され情報が抜き取られるリスクがあるでしょう。

こうした背景から、病院は「社会的に影響力が大きく、かつ価値の高い情報を多く抱える組織」として標的にされているのです。

 

理由3:ITとOTが混在する「複雑で脆弱なネットワーク」

現代の病院は、電子カルテや検査システム(IT)と、CT装置や人工呼吸器といった医療機器(OT)が同一ネットワークで稼働しています。この複雑な病院ネットワーク構造が、攻撃者にとってのチャンスとなってしまうのです。

医療機器の多くはOSが古く、パッチを適用できない構造になっています。さらに、メーカーによる保守契約や法的制約のため、利用側で自由に更新できないケースも多いのが現状です。

IT側でセキュリティを強化しても、OT機器が穴となり病院ネットワーク全体のリスクを高めます。加えて、院内LAN・遠隔診療・クラウド連携など多層的な接続環境が生まれ、全体を統一的に管理することが難しくなっています。

病院ネットワークは「見えない脆弱性」が多く、攻撃者にとって侵入経路の宝庫となっているのです。

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ランサムウェア攻撃が病院経営と患者の安全に与える深刻な影響

ランサムウェアをはじめとするサイバー攻撃の問題は、単なる情報漏えいにとどまりません。病院にとっては「診療の継続」と「患者の命」という二つの根幹を同時に脅かす重大なリスクです。

診療停止による経済的損失は甚大であり、電子カルテや会計システムが使えなくなれば、受付・診察・検査・会計といった一連の業務がすべて停止します。復旧には数週間から数か月を要することもあり、その間の逸失利益や患者離れは経営に直接的な打撃を与えます。

さらに深刻なのは、医療の安全が損なわれることです。カルテが閲覧できないことで誤投薬や検査ミスが発生するリスクが高まり、最悪の場合は医療事故につながります。

病院は社会インフラであり、診療の停止は地域全体に波及します。経営的損失だけでなく、医療提供体制そのものを揺るがす「社会的インシデント」として捉えなければなりません。

 

診療の停止・遅延による地域医療へのダメージ

病院がランサムウェア被害を受けた場合の影響は自院にとどまりません。救急搬送の受け入れ停止や手術延期は、周辺医療機関に患者が集中する「医療連鎖障害」を引き起こします。

地域の中核病院が一時的に機能を失うことで診療体制が崩壊し、住民の医療アクセスが著しく低下します。特に、救急医療や高度治療を担う病院が停止すると、軽症患者から重症患者まで対応が滞り、医療格差の拡大を招く可能性があるでしょう。

こうした影響は、経営指標で測れない社会的損失を生み出します。つまり、ランサムウェア攻撃は「病院経営の問題」であると同時に「地域社会全体の課題」でもあるのです。

医療機関は自院の防御だけでなく、地域医療連携体制の中でセキュリティ対策を共有・強化する姿勢が求められます。

 

電子カルテの暗号化による医療過誤のリスク

電子カルテが暗号化されて閲覧できなくなると、診療情報の参照が不可能になります。既往歴・アレルギー・薬剤禁忌などの情報が失われることで、誤投薬や重複検査といった医療過誤につながるリスクが高まります。

電子カルテは単なるデータベースではなく、医療現場の意思決定基盤です。電子カルテが失われることは、医療従事者が視覚と記憶だけで治療を行う状態に等しく、医療の質を根底から揺るがします。

さらに、システム障害時に紙カルテへ切り替える運用が未整備であれば、情報の不整合や転記ミスが連鎖的に発生する可能性もあるでしょう。

セキュリティ対策とは、サイバー攻撃を防ぐだけでなく「攻撃を受けても医療の安全を保つ」ための備えでもあります。データのバックアップやBCP策定は、医療事故を防ぐ最終防壁であるといえます。

 

攻撃者はどこから侵入する?病院特有の侵入経路と最新の攻撃手口

病院のネットワークは、診療系システム、医療機器、事務システム、委託業者との接続など、多層的な構造を持っています。その複雑さが、攻撃者にとっては豊富な侵入経路となる場合があります。

近年のランサムウェア攻撃では、標的となる組織のネットワーク構成や委託先との接続状況まで調査したうえで侵入する「多段階攻撃」が主流です。特に、VPN機器やリモートメンテナンス経路、メール・USBなど、医療機関特有の脆弱な接点が狙われています。

攻撃者は、まず外部接続機器を突破して内部ネットワークに侵入し、横展開によって電子カルテサーバーなど重要資産に到達します。ここでは、実際に多くの医療機関で確認されている代表的な侵入経路を整理します。

 

VPN機器の脆弱性を悪用した侵入

病院では、外部委託業者との接続や職員のリモートアクセスを目的にVPN機器を多用しています。しかし、ファームウェアの更新が遅れたり、古い認証方式を使い続けたりすることで、脆弱性が放置されやすいのが現状です。

攻撃者は、このVPN機器の脆弱性を突いて内部ネットワークに侵入します。侵入後は権限昇格や横展開を行い、電子カルテや検査システムまで到達。管理者権限を奪取した上で、全システムを暗号化して身代金を要求します。

特に問題となるのは、VPN装置が「外部と内部をつなぐ唯一のゲートウェイ」である点です。一度突破されると全システムへの侵入が可能になるため、極めて危険です。

定期的なパッチ適用、アクセスログの監視、多要素認証の導入など、防衛策を講じておかなければなりません。

 

リモートメンテナンス用の経路からの侵入

医療機器メーカーや電子カルテベンダーは、遠隔から機器の保守・障害対応を行うためにリモート接続を使用します。遠隔でアクセスできることは利便性が高い一方で、攻撃者にとっては新たな侵入経路になるのも事実です。

管理が不十分なリモートアクセス環境では、認証情報の流出や設定不備が原因で外部から侵入されるリスクが高まります。特に、24時間接続状態のRDP(Remote Desktop Protocol)やVPN接続が放置されている場合、攻撃者が容易に内部に侵入できます。

リモートメンテナンス用の経路を守るには、利用時間・アクセス元・接続対象を限定し、常時接続を避けることが重要です。また、第三者業者によるアクセスには必ず監査ログを残し、定期的な点検を実施することで、潜在的なリスクを最小化できます。

 

EメールやUSBメモリを介した従来型の侵入

Emotetなどのマルウェアを用いたフィッシングメール攻撃は、いまなお病院への主要な侵入手段です。職員が添付ファイルやリンクを誤って開くことで感染が拡大し、院内ネットワーク全体に被害が及びます。

また、医療機器や外部業者の持ち込み端末を通じたUSB感染も後を絶ちません。院内での情報共有のためにUSBメモリを使用する文化が残っていることが、攻撃者にとって格好の入口となっています。

こうした従来型の攻撃は「古い手口」と見なされがちですが、人的ミスを起点とする以上、完全には防げません。そのため、標的型メール訓練やUSB利用ルールの徹底など、人的対策と技術的対策を組み合わせる必要があります。

病院のセキュリティは、技術だけでなく人の防御力にも支えられているのです。

 

病院全体を守るために不可欠なランサムウェア対策の全体像

ランサムウェア対策を効果的に機能させるには、単発的なツール導入ではなく「病院全体でのセキュリティマネジメント」が欠かせません。

医療機関は、診療業務・研究・経理・委託管理など多様なシステムが連携しており、1か所の脆弱性が全体の停止につながります。そのため、個別対策ではなく、リスク評価・予防・検知・対応・復旧までを一貫して設計しなければなりません。

厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」も、単なる技術的対策ではなく「組織的・人的・物理的・技術的」な多層防御を求めています。

ここでは、病院が構築すべきセキュリティ体制の全体像を、ガイドラインの基本理念と合わせて整理します。

 

厚生労働省のガイドラインが示す基本的な考え方

「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第6.0版)」は、病院の規模やシステム構成を問わず、すべての医療機関に対して安全管理措置を求めています。

ガイドラインの基本方針は、「リスクに応じた対策を講じること」と「業務を止めずに安全を確保すること」です。単に脅威を遮断するのではなく、診療の継続性を前提とした対策設計が求められています。

具体的には、以下の4領域が重視されています。

  • 組織的対策
  • 人的対策
  • 物理的対策
  • 技術的対策

セキュリティ責任者を明確にし体制整備をするとともに、職員教育とアクセス権限の適正化が求められます。さらに、サーバー室・端末の入退室管理や、アクセス制御・暗号化・ログ管理といった対策も欠かせません。

これらをPDCAサイクルで運用するとともに、定期的な見直しが必要です。ガイドライン準拠は、法令遵守の枠を超えた「医療品質の一部」といえるでしょう。

 

平時からの備え(予防・検知)

ランサムウェア対策の中心は、攻撃を「受けない」「侵入させない」ための平時の備えです。

まず重要なのは、脆弱性管理とアクセス制御です。OSや医療機器のパッチ適用を定期的に実施し、更新が困難な資産には仮想パッチなどの代替策を導入します。また、利用者ごとの権限を最小限に制限し、不審な通信や端末を早期に検知する監視体制を整備します。

次に、可視化と早期検知の仕組みです。ネットワーク監視やSIEMを活用して異常な通信を検出し、攻撃の兆候を早期に把握します。

さらに、定期的な教育・訓練も不可欠です。技術的防御だけでなく、職員一人ひとりが攻撃手口を理解し日常的に注意を払う文化を育てることが、最大の予防策となります。

平時の備えは、攻撃を受けない環境を作るための基盤です。

 

インシデント発生時の対応(初動・復旧)

どれだけ対策を講じても、リスクを完全にゼロにはできません。重要なのは「攻撃を受けたあとにいかに被害を最小化するか」です。

まず、初動対応体制を明確にしておくことが必要です。感染を確認した際には、すぐにネットワークを遮断し、影響範囲を特定します。そのうえで、関係機関(警察・IPA・厚労省など)への報告ルートを定め、情報共有を迅速に行います。

次に、バックアップと復旧計画です。定期的にデータをオフライン環境に保存し、復旧手順をシミュレーションしておくことで、診療停止期間を最小限に抑えられます。

最後に、事後分析と改善を行い、原因を特定して再発防止策を組み込みます。

インシデント対応は、単なる緊急対応ではなく「再発しない仕組みづくり」の出発点です。病院全体での継続的な改善こそ、真のセキュリティ体制の確立につながります。


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具体的なランサムウェアセキュリティ対策7選

ランサムウェア対策は、理念や方針だけでは機能しません。重要なのは、現場で実行できる仕組みを整えることです。

ここでは、病院が現実的に取り組める7つの実践的対策を紹介します。これらは単体で完結するものではなく、組み合わせて初めて最大の効果を発揮します。

 

対策1:IT/OTネットワークの可視化と分離

まず取り組むべきは、病院ネットワーク全体の「見える化」です。自院のネットワークに何が接続され、どの経路で通信しているのかを正確に把握しなければ、適切なセキュリティ対策はできません。

可視化によって初めて、医療情報システム(IT)と医療機器(OT)の境界が明確になります。その上で、論理的・物理的な分離を行い、感染拡大を防ぐ「防火壁」として機能させます。

たとえば、診療系ネットワークと検査機器系ネットワークをセグメント化し、通信を必要最小限に制御することで、病院ネットワーク全体の防御力を高められます。これにより、1台の感染端末が全体に影響を与えるリスクを大幅に低減できます。

ネットワーク分離は、全ての対策の基盤となる重要なステップです。

 

対策2:脆弱性管理と仮想パッチの適用

病院には、パッチ適用が困難な医療機器や旧OS環境が数多く存在します。これらを放置しておくと、攻撃者にとって格好の標的となってしまいます。

こうした環境には、ネットワークレベルで脆弱性を防御する「仮想パッチ」が有効です。仮想パッチとは、機器自体を変更せずに通信制御層で攻撃を遮断する技術であり、可用性を維持しながら脆弱性を補えます。

さらに、定期的なスキャンと脆弱性リストの更新を行い、リスクを定量的に把握することも重要です。

止められない機器を守るための現実的な手段として、仮想パッチは医療現場に最適な防御策だといえるでしょう。

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対策3:医療機器を含む全資産へのアクセス制御

病院では、職員・委託業者・機器メーカーなど多様な主体がネットワークに接続します。これを無制限に許可すると、侵入経路が無数に生まれます。

対策の基本は「誰が、どの資産に、どの操作を行えるのか」を明確にすることです。権限を最小限に設定し、不要なアクセスを制限しましょう。特に医療機器は診療データと直結するため、外部業者による接続は時間・端末・接続元を限定する必要があります。

加えて、認証情報の共有は禁止し、すべてのアクセス履歴を監査ログとして記録します。

アクセス制御の徹底は、外部侵入だけでなく内部不正の防止にも役立ちます。

 

対策4:セキュリティログの監視と異常検知

被害拡大を防ぐためには、ネットワーク内の動きを常時監視することが重要です。

SIEM(Security Information and Event Management)やIDS/IPSを活用し、ログを一元管理することで、不審な通信や不自然な操作を早期に検知できます。

攻撃の兆候をリアルタイムで把握できれば、暗号化が始まる前に遮断措置を講じることが可能です。特に、複数のシステムを横断して相関分析を行うことで、単独では見逃す小さな異常も脅威として浮かび上がります。

可視化と自動検知の仕組みを整えることで、迅速な初動対応につなげられるのです。

 

対策5:データのバックアップと復旧計画

バックアップは、ランサムウェア対策の最後の砦です。

感染によってデータが暗号化されても、バックアップが安全に保持されていれば復旧できます。バックアップの基本は「3-2-1ルール(3つのコピーを2種類の媒体で、1つはオフライン保管)」を徹底することです。

加えて、定期的なリストア(復旧テスト)を実施し、実際に復元できる状態を維持する必要があります。

クラウドバックアップだけに依存するのではなく、ネットワークから切り離された物理媒体を併用することで、暗号化被害を回避できます。

 

対策6:全職員を対象としたセキュリティ教育

どれほど高度な防御を導入しても、標的型メールや不審なUSBの挿入など、人為的ミスが攻撃の起点となるケースは後を絶ちません。

そのため、医師・看護師・事務職員などすべての職種を対象に、定期的なセキュリティ教育を実施することが欠かせません。

特に効果的なのが、模擬フィッシング訓練や事例ベースの演習です。実際に起こり得る失敗を疑似体験することで、職員一人ひとりの警戒意識を高められます。

教育は一度きりではなく、継続的に行うことで文化として定着します。人的防御力の向上は、費用対効果の高いセキュリティ投資といえるでしょう。

 

対策7:インシデント対応体制の構築と訓練

インシデント対応の準備をしておくことも、重要な対策のひとつです。
発生時に誰が指揮を執り、誰がどこに連絡し、どの手順で対応するのかを明文化したインシデントレスポンス計画(IRP)を策定します。

計画には、初動・封じ込め・根絶・復旧・報告・再発防止の一連の流れを明示し、定期的な机上訓練や実働訓練で検証しましょう。訓練を重ねることで、実際の緊急時にも冷静に対応でき、被害を最小限に抑えられます。

セキュリティ体制は文書化と実践の両輪で機能します。平時から訓練を重ねることで、組織全体が医療を止めずに維持できるのです。

 

まとめ:ITとOTを統合したセキュリティで未来の医療を守る

ランサムウェア対策は、IT部門だけの課題ではありません。医療の安全と病院経営の継続を守る、全組織的な取り組みです。

特に、電子カルテや医療機器が連携する現代の医療環境では、ITとOTを分けて考えること自体がリスクになりつつあります。ITとOTの両者を統合的に保護する体制を整えることが、これからの医療機関に求められます。

セキュリティ対策はコストではなく、医療の信頼を支える投資です。患者の命を守り地域医療を継続するために、病院全体でセキュリティ戦略を構築しましょう。

 

 

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