プロダクトマーケティングマネージャー
こんにちは。プロダクトマーケティングマネージャーの西尾です。
今回は「5S」の考え方をサイバーセキュリティにも応用できないか考えてみたいと思います!
製造現場の「当たり前」、5S
製造現場の「当たり前」として根づく5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)。
安全衛生・品質を守るうえでの基本として、多くの企業で取り組まれています。
あらためて整理すると、5Sとは:
- 整理:要るものと要らないものを分け、要らないものを捨てる
- 整頓:必要なものをすぐに使えるようにしておく
- 清掃:常にきれいにし、異常を早く発見できるようにする
- 清潔:整理・整頓・清掃を維持する
- しつけ:決められたルールを守れるよう習慣づける
こうして並べると、ごく単純で当たり前のように見えます。
しかし、現場の一人ひとりが、これを毎日、丁寧に続けていくのは実際にはとても難しいことです。
実は私自身、5Sの重要性を身にしみて思い知った経験があります。
5Sの大切さを身にしみて学んだ日
設計エンジニアとして新卒で入社した半導体メーカーでは、配属前に3ヶ月間のクリーンルームでの現場研修がありました。
そこで最初に、徹底的に叩き込まれたのが「5S」でした。
任された最初の仕事は、エアピンセット(※1)を使い、手作業でウェハ(※2)をキャリア(※3)間で移しかえるという作業。
これは、クリーンルームでの重要スキル「ウェハハンドリング」に習熟するためのトレーニングでもあります。
メンターからは「ウェハは非常に繊細で高価。とにかく慎重に!」と、耳にタコができるほど繰り返し注意を受け、当初は大変緊張したものです。
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※1:エアピンセット
空気圧を利用して、手を触れずにウェハを吸着・移動させる装置。繊細な表面を傷つけずに取り扱うために使用される。吸引用の長いチューブが付属し扱いにはコツがいる。
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※2:ウェハ
半導体製品の基板となる円形の薄いシリコン板。微細な電子回路が加工される。非常に高価かつ壊れやすい部材。
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※3:キャリア
ウェハを安全に搬送・収納するための専用トレイ。クリーンルーム内での工程間移動などに使われる。
現場では、すべての作業用具に「あるべき場所」が決められています。
ある日、ピンセットのチューブがいつもより長く机の上に出ているのに気づきました。が、「まあ大丈夫だろう」とそのまま作業を開始。
結果、絡まったチューブが作業の妨げとなり、ウェハを机の上に落としてしまったのです。
幸い割れはしなかった(割れたら大惨事)ものの、貴重なウェハの一枚がスクラップ行きに…。
「あのとき、気づいていたのに―」
5Sは単なる整理整頓のお作法ではなく、“事故を未然に防ぐための仕組み”なのだと、身を持って痛感した出来事でした。
その「気づき」を、サイバーリスク管理にも活かせないか
日々の業務の中で、「なんとなく使っているPC」「管理状況が曖昧な機器」「中身が不明なメディア」など、小さな“乱れ”に気づくことがあります。
それは物理的なゴミでも危険物でもありませんが、現場の衛生を乱すホコリのように、気づかぬうちにセキュリティの弱点になっているかもしれません。 デジタルの世界でも、“机の上に長く出ているチューブ”のような状態が、思わぬサイバーセキュリティ事故につながるのです。
そんなときこそ、現場で慣れ親しんだ5Sの考え方が役に立ちそうです。
5S項目 | サイバーセキュリティへの応用例 |
整理 | 不要な端末・データ・ソフトの管理 |
整頓 | 安全なデバイス管理の仕組みづくり |
清掃 | セキュリティ対策の定期的な実施 |
清潔 | アップデートや不要ファイルの削除 |
しつけ | 従業員の意識向上と現場への浸透 |
現場向け「サイバー5S」チェックリスト
以下は、日々の点検や作業前に使える簡易チェックのアイデアリストです。
すべてを行うことは難しくても、まずは「気づく・整える」ところから始めてみませんか?
【整理】
- 放置されたPC・USBメモリがないか
- 不要なソフトやファイルが作業端末に残っていないか
- 使用者不明な機器はないか
【整頓】
- 各端末の用途・使用者が明確か
- データ保存先が整理されているか
- 情報の持ち込み・持ち出しにルールがあるか
【清掃】
- 定期的にマルウェアチェックを行っているか
- 使用ログや設定確認が定期的に実施されているか
- 外部接続端末の状態をチェックしているか
【清潔】
- ソフトウェア・OSが最新状態に保たれているか
- 古いデータやソフトを適切に削除しているか
- 一時使用デバイスの取り扱いに配慮しているか
【しつけ】
- 情報機器の使い方や注意点を現場で共有できているか
- 新人にもわかる手順書やフローが整備されているか
- セキュリティの話題を日常的にできる雰囲気があるか
まとめ:「5S=現場を守る衛生文化」を、サイバーにも
製造現場で根付いてきた5Sの取り組みは、単なる整理整頓の習慣ではありません。
「安全」と「衛生」を保つための文化的な土台として、品質や安全を支えてきました。
異物の混入や汚染を防ぐための点検や清掃は、現場では当たり前の「基本動作」として定着しています。
この「衛生」の考え方は、実はサイバーセキュリティにも通じます。
見た目には問題がなくても、気づかない“ノイズ”や違和感の裏にリスクが潜んでいる。
だからこそ、デジタルの世界でも目に見えない脅威を「持ち込まない」、
「使う前に検査する」という丁寧な対応が大切です。
「デジタルの衛生=サイバーハイジーン」を意識し、
日々の小さな点検や習慣を積み重ねること。
それが、現場と同じように、クリーンで安全なデジタル環境を守る第一歩になるのです。
関連情報
閉域網内の端末やスタンドアロンPC、外部からの持ち込みデバイスは、セキュリティ対策の“衛生管理”が行き届きにくい領域です。
TXOne Elementシリーズは、ネットワークにつながらない機器や一時的に持ち込まれる媒体を対象に、マルウェアの可視化や検査を行うことで、そうした“見えにくい汚れ”を洗い出し、現場のデジタル衛生を保つお手伝いをします。